東京高等裁判所 平成12年(ネ)1729号 判決
主文
一 原判決を取り消す。
二 控訴人の本件訴えを却下する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 平成一一年四月二五日に大宮市立栄小学校で開催された被控訴人の同年度通常総会における第三号議案同年度役員(三役)の承認決議が無効であることを確認する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、当審における控訴人の主張を以下のとおり付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」中の控訴人と被控訴人関係部分に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
本件会則二二条によれば、被控訴人の総会における議長は、総会において出席会員の中から選任する旨定められているところ、本件決議がされた被控訴人の前記通常総会(以下「本件総会」という。)においては、他の議案とともに議長の選任を会長に一任する旨が表決票に記載されていたため、出席者が議長を選任することができず、会長から指名された会員が議長となり、しかも、恣意的に議事進行が行われた結果、公平な発言の機会が奪われたばかりか、執行部側の弁護士が出席し、会議場にビデオカメラを設置し、街区ごとに着席位置を指定するなど出席会員を威圧して議事進行が行われたものであり、本件決議は無効である。
第三証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所は、控訴人の本件訴えは、不適法であり却下すべきものと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 争点1(司法判断の可否)についての判断は、原判決一一頁一行目から同一三頁三行目までに記載のとおりであるから、これをここに引用する。
2 しかしながら、前記争いがない事実等並びに証拠(甲三、九、二九、四一、四二)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人の平成一〇年度の会長は牧憲男であったこと、被控訴人は、牧憲男の招集により本件総会を開催し、平成一一年度の被控訴人の役員として会長牧憲男ほかを選任する旨の本件決議を行ったこと、次いで、被控訴人は、平成一二年五月二一日、牧憲男の招集により被控訴人の平成一二年度の通常総会(以下「平成一二年度総会」という。)を招集し、同年度の役員として会長山門健自ほかを選任する旨の決議を行い、同人らが新役員に就任したこと、本件会則(甲九)においては、被控訴人の役員の任期は一年とされ(一四条一項)、会長が総会の招集権者であり(二一条一項)、その事業年度は毎年四月一日から翌年三月三一日まで(三二条)と定められていることが認められる。
右によれば、本件決議により選任された被控訴人の会長牧憲男ほかの役員は、既に任期が終了し、また、平成一二年度総会において同年度の被控訴人の役員として会長山門健自ほかが選任され、同人らがこれに就任したのであるから、これにより、本件決議の無効確認を求める本件訴えは訴えの利益が消滅したものと解される。なお、仮に本件決議が無効であり、牧憲男が平成一一年度において被控訴人の会長に選任されていないとしても、同人は、その前年度である平成一〇年度における被控訴人の会長であり、後任会長が就任するまでの間会長としてその職務を継続する権限を有し義務を負うものと解されるから(本件会則一四条二項後段参照)、牧憲男は、右の地位において、平成一一年度以降においても総会の招集権限を有することになり、右権限により、平成一二年度総会を招集したものと解することができる。したがって、平成一二年度総会は、正当な招集権限を有する牧憲男によって招集され、同年度の新役員を選任したことになる。そして、このように平成一二年度の新役員が選任されたことにより、本件決議によって選任された平成一一年度の役員はいずれにしてもその地位を失うに至ったのであるから、本件決議の無効確認を求める利益も失われるに至ったものといわざるを得ない。
二 よって、本件訴えは不適法であるから、原判決を取り消した上、これを却下することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 櫻井登美雄 裁判官 植垣勝裕)